皆さんこんにちは。今回は、消防法における危険物の定義から、数量に応じた取扱いルール、倍数計算の基本までを解説していきます。
危険物取扱者試験では、「消防法」に関する理解が欠かせません。
中でも、「危険物の定義」や「指定数量」「倍数の計算」などは、基本となりますが、つまずきやすいポイントです。
しっかり基礎をおさえて、試験合格への第一歩を踏み出しましょう。
1. 危険物とは?
消防法でいう「危険物」とは、「消防法別表第1」に掲げられた物品を指します。火災の原因になりやすく、厳しい取扱い基準が設けられています。
- 対象は主に固体・液体(※気体は対象外)
- 毒物や劇物でも、別表にないものは「危険物」ではない
- 可燃性があっても、法に該当しなければ対象外
危険物に含まれない例:
物質 | 理由 |
---|---|
木材・石炭 | 可燃性だが、別表に記載なし |
都市ガス・プロパンガス | 気体のため対象外 |
2. 危険物の分類(第1類〜第6類)
危険物は性質によって6つの類に分類されます。類ごとの特徴を理解しておきましょう。
類別 | 性質の概要 | 例 |
---|---|---|
第1類 | 酸化性固体 | 硝酸カリウムなど |
第2類 | 可燃性固体 | 赤リンなど |
第3類 | 自然発火性・禁水性物質 | 黄リンなど |
第4類 | 引火性液体 | ガソリン、灯油など |
第5類 | 自己反応性物質 | 有機過酸化物など |
第6類 | 酸化性液体 | 過酸化水素など |
3. 指定数量とは?
「指定数量」とは、取扱いや保管に法令上の規制がかかる基準となる量のことです。
- 危険物ごとに「危険物の規制に関する政令(別表)」で数量が定められている
- 単位は固体:kg、液体:L
- 指定数量が小さいほど危険性が高い
第4類危険物の一例:
水溶性/非水溶性 | 指定数量 | 備考 | |
---|---|---|---|
特殊引火物 | 50L | ジエチルエーテルなど | |
第1石油類 | 非水溶性 | 200L | ガソリンなど |
第1石油類 | 水溶性 | 400L | アセトンなど |
アルコール類 | 400L | エチルアルコールなど | |
第2石油類 | 水溶性 | 1,000L | 灯油、軽油など |
第2石油類 | 非水溶性 | 2,000L | 氷さく酸など |
第3石油類 | 非水溶性 | 2,000L | 重油など |
第3石油類 | 非水溶性 | 4,000L | グリセリンなど |
第4石油類 | 6,000L | ギアー油など | |
動植物油類 | 10,000L | あまに油など |
💡同じ石油類でも、水に溶けるかどうかで指定数量が異なります。
4. 危険物の数量による取扱いルール
① 技術上の基準
危険物の量によって、適用される法令や施設区分が異なります。
区分 | 危険物の量 | 適用法令 | 対象施設 |
---|---|---|---|
指定数量以上 | 指定数量を超える場合 | 危険物の規制に関する政令 | 製造所・貯蔵所・取扱所 |
指定数量未満 | 指定数量に満たない場合 | 市町村の火災予防条例 | 危険物少量取扱所 など |
例で確認:
- 灯油900L → 指定数量未満 → 市町村条例が適用
- 灯油1,000L → 指定数量以上 → 政令が適用
② 貯蔵、取扱いの制限の例外
危険物を貯蔵・取扱いするときは決まりがありますが、例外があります。
原則:指定数量以上の危険物は製造所等以外の場所で貯蔵、取扱いできない。
例外:所轄の消防長又は消防署長の承認を得ていれば、10 日以内であれば指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱いすることができる。
💡この例外は「仮貯蔵・仮取扱」と言います。
💡数量に制限はありません。
💡「承認」は仮貯蔵・仮取扱の場合のみ使う用語で、ひっかけ問題でよく出題されます。
5. 倍数の計算方法
消防法では、危険物の取り扱い量を「指定数量に対する倍数」で判断します。
① 1種類の危険物の場合
計算式:
倍数 = 危険物の量 ÷ 指定数量
例題:
- ガソリン1,000L(指定数量:200L)
- → 1,000 ÷ 200 = 5倍
→ 指定数量以上
② 複数種類の危険物の場合
各危険物ごとに「量 ÷ 指定数量」で倍数を出し、その合計で判断します。
例題:
危険物 | 貯蔵量 | 指定数量 | 倍数 |
---|---|---|---|
ガソリン | 180L | 200L | 0.9倍 |
灯油 | 5,000L | 1,000L | 5倍 |
重油 | 10,000L | 2,000L | 5倍 |
合計 | — | — | 10.9倍(指定数量以上) |
➡ 倍数合計が1以上なら、「指定数量以上」として法令の対象になります。
まとめ
- 危険物は「消防法別表第1」に定められた固体・液体
- 気体は対象外
- 第1類~第6類に分類される
- 指定数量を超えると法令上の規制対象
- ただし、例外がある「仮貯蔵・仮取扱」
- 水溶性/非水溶性で数量が異なる場合がある
- 貯蔵量によって「政令」か「条例」の適用が変わる
- 複数種を扱うときは「倍数合計」が重要
- 合計が1以上=指定数量以上
危険物に関する消防法の基礎知識は、取扱者試験において最も重要な学習ポイントです。
ぜひ何度も読み返して理解を深め、確実に合格を目指して学習を進めてくださいね。
今回もありがとうございました。
コメント